安きに流れる

中隆志

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 裁判がウェブ化されて、ほとんどの民事訴訟の期日を事務所にいながらにすることができる。
 昔は、離婚事件で別居して実家に帰ってきているような事件の場合、相手方の住所地で離婚の調停を出さないといけなかったため、北海道の家裁に通っていたこともある。
 今は調停もWeb会議で実施できるので、大変ありがたい。依頼者の経済的負担も少なくなる。今も1件、九州の家裁でWeb調停をしている。

 こうなると、人間は楽な方に流れるので、たまに裁判所に行かないといけないと思うと、面倒だなと思ってしまうのである。
 京都地裁など、すぐそこなのだが。
 債権者集会など、裁判所に行く必要のある期日はまだまだある。刑事事件や被害者参加もそうである。
 私は、被害者参加については、京都アニメーションの事件でご遺族の皆さんが遠方から都合をつけて京都地裁に来ているのを見て、せめて各地の裁判所とつないで、法廷の中継ができないものかと思ったものである。

 私が弁護士登録をした平成8年4月には、まだ電話会議すらなく、全ての裁判はリアルに現地に行っていた。
 勤務した事務所は、出張が多く、秋田地裁に訴状を陳述のためだけに行っていた。8時台の飛行機に乗り、夜の7時過ぎの飛行機まで時間を潰していた。それしか飛行機がなかったのである。空港で記録を読んだり、本を読んだりしたものである。

 それから比べると、京都地裁に行くのが面倒だなんてバチがあたると思うが、まあ、人は安きに流れるものなのである。

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