読書日記「デスチェアの殺人」
原書房。ミキータ・ブロットマン。
受刑者とともに古典文学を読んでみたらどうなるかというノンフィクション。
著者は、受刑者に惹かれ、受刑者と自分はほんの少しの違いで塀の外と内側にいるだけではないのかという思いを持っている。
また、この文学はこう読むべきだとか、あるいは、受刑者に受けると思っていたものが受けなかったことにショックを受ける。
正直なところ、著者が意図したノンフィクションとしては成功しているとは思えない一冊である。
それは、著者の、「受刑者にこの文学を読んでもらったら、こういう反応が来るべきだ」とか、「受刑者のこの文学についての読み方は間違いだ」というような主張と、著者が思うようにならないことにショックを受けていることが読んでいて癇にさわるためなのかと思われる。
著者は文学の教授ということであるので、教授に対して意見をするようで申し訳ないのだが、そもそも、文学をこう読むべきという考え自体誤っているのではないかと思う。
受刑者と著者との間の温度差は、「ロリータ」で顕著である。
この本は、著者に共感をしようと思うと読むと、読み進められない。
ただ、受刑している人たちの文学作品に対する受け止めや、受刑している人がどういう考えやどういう人なのかという観点から読むと、また違ってくる一冊であり、著者が求めた内容とは異なる読み方をすることで、得られるものがある一冊かと思われる。



