読書日記「デスチェアの殺人」
その時期によって、世相や社会情勢を反映して、事件類型の傾向がある。
過去、過払い金請求訴訟がやや落ち着いた後は、破産事件の件数が増大した。
今は免責審尋はほぼ開かれることはないが、当時は免責審尋が必要で、あまりの数の多さに同時廃止事件では集団免責審尋が実施されていた。
そこにいる人は、全員破産者であることがお互いに分かるのである。裁判官は何人かを指名して宛てて、今後の生活についての意見や反省を言わされるのであるが、プライバシーも何もなかった時代であった。
破産事件が落ち着いた後は、特にこれというものはなかったが、コロナの最中またはそれ以降は離婚の相談が増えた印象である。
コロナで自宅にいる時間が長く、お互いまたは一方のイヤなところ(または本当の配偶者の姿)が見えてしまったというようなことが多かった印象である。
最近は、事業者であればコロナ融資の返済が滞るか、支払ができないとして自己破産も多く、株価は高いが庶民の生活が苦しいためか、個人の自己破産も増加している。
私は担当していないが、詐欺被害も多く、うちの弁護士はしょっちゅう相談を聞いている。
また、これからは婚姻しない人が増えると、相続財産清算人の事件も一定程度増えると思われる。
相続関係の争いも多く、「長男が全て自分のものだ」という主張に対しては当然権利があるとして遺産分割の争いとなることも多い。
事件は世相を反映するが、今後はどういう事件が増えるのであろうか。
法的な紛争はない方がよいのだが、かつてベテラン弁護士が言っていたとおり、「人が人である限り、紛争がなくなることはない」のである。



