読書日記「デスチェアの殺人」
文藝春秋。宮城谷昌光。
三国志名臣列伝の最後は呉編である。
呉は魏と蜀と比較しても三国志の中で地味で、人気もさほどない。
関羽を騙し討ちのような形で殺したということで人気もないのであろう。
私自身、あまり好きでもないのだが、一応、呉編だけ読まないのも気持ちが悪いので、3冊読もうと思い購入した。
孫権は若い頃は名君だったと思うが、年老いてどうしようもない皇帝となったことがわかる。
後継者問題に優柔不断な態度を示した上で、そのことに対して陸遜が意見を述べたところ、呉の中でも屈指の武将の陸遜を最後はいじめ抜いて殺害したりしている。読んでいて気分が悪い。
実際の三国は、魏の国力が圧倒的に抜きん出ており、蜀と呉を併せても全く対抗できないほどであったため、孫権と劉備が戦うということはそれぞれの国の滅亡を早めるだけであったことは今の我々からすれば明らかなことである。
ただ、時代の中でそれを冷徹に見通せるかというとそれはまた別の話であり、筆者は、呉の中で魯粛以外にはそうした戦略眼を持っていた武将はいなかったとしており、魯粛は劉備と対決してはならないとする戦略を常時主張していた。
魯粛が長命していれば三国志の展開も変わっていたのかもしれないと改めて思った。



