徹夜
行政事件訴訟法12条は、1項において、行政庁を被告とする取消訴訟の管轄裁判所をその行政庁の所在地の裁判所と定めるのに加え、3項において、当該処分又は裁決(以下「処分等」という。)に関し「事案の処理に当たった下級行政機関」の所在地の裁判所にも取消訴訟の管轄を認めている。
平成26年の最高裁は、日本年金機構の下部組織である事務センターが行政事件訴訟法12条3項にいう「事案の処理に当たった下級行政機関」であるかどうかにつき、さらに審理を尽くすべきとして差し戻した決定である。当時は、国民年金法に基づき年金の給付を受ける権利の裁定に係る事務の委託を受けた日本年金機構の下部組織である事務センターが日本年金機構法等の定めに従って上記裁定に係る処分に関わる事務を行っていたことから、そのような判断がされた。
ところが、現在は年金の裁定は全て東京で行うように変更され、各地では書類の受付をするだけとなったため、行政事件訴訟法12条4項により、原告の住所地を管轄する高裁所在地の地方裁判所でしか訴訟提起できないこととなったという移送決定がたくさん出ている。
大阪高等裁判所管轄の住所地だと、全て大阪地裁が管轄裁判所となる。
今はWeb会議ができるからまだよいが、そうでなかった時代には原告の出廷の労力は相当なものがあったと思われる。
そのように年金の裁定のやり方が変更されているのを知らずに、私はある地裁に出して大阪地裁に移送されたので(勿論移送については争ったのだが)、そうした訴訟をたくさんしている弁護士からすれば当たり前のことなのかも知れないが、久しぶりに受任したとか、初めて受任するという弁護士のために、知識として役立つかもしれないので、書いておく。