読書日記「百年の孤独」
コロナ渦で売上が下がり、賃料の支払を遅延した場合に、信頼関係が破壊されていないのかという論点がある。
少し事件で調べたので、裁判例を列挙しておく。
割合そういう主張がされていて、裁判例も出ているものだと感心した。
法務省がそのようにも受け取れる文書を出したからであろう。賃貸借契約に関する民事上のルールというところに、延滞があってもただちに信頼関係は破壊されない場合があると書いてあるためである。
しかし、以下の裁判例のとおり、現実には中々厳しいところがあるようである。
なお、以下の整理は私の整理であるので、正確性については留保させていただく。
東京地裁令和3年7月20日判決は、新型コロナウィルスの影響により当該賃貸物件を使用して営む飲食店の利益が減少したとしても、賃貸人側が使用収益をさせることを制限していない上、そもそも賃貸人は賃借人に賃貸物件の使用収益により利益を得させる義務を負うものでもなく、緊急事態宣言により賃貸物件が使用不能となったと評価することもできないとした。
また、東京地裁令和4年2月15日判決は、新型コロナウィルスの影響により営業ができなかったことから賃料が減額されるべきだという賃借人側の主張について、「使用収益ができなかったという事情ではない」として賃借人側の主張を排斥している。
東京地裁令和3年9月9日付判決は、法務省の文章を引用して新型コロナウィルスの影響による賃料不払について、借主側は信頼関係の不破壊を主張したが、4ヶ月分の滞納があること、店舗が閉店していることから継続使用をする意思があるかどうか疑問を抱かせることを理由として、解除直後に相当金額を支払ったとしても解除後の事情であるとして、信頼関係の破壊があるとしている。
過去に延滞があったという事情は伺うことができない。
東京地裁令和3年10月5日判決は賃料債務のような金銭の給付を目的とする債務の不履行については、不可抗力をもって抗弁とすることができないことはもとより、コロナ渦の中にあって、賃料債務の不履行によって経済的損失を被る賃貸人側の事情も看過することはできないとした上で、5ヶ月分の賃料の延滞をもって信頼関係が破壊されたとし、その後も延滞額が増えたことをも一つの事情として契約解除を認めている。
東京地裁令和3年7月20日判決は、新型コロナウィルスがまん延する以前から過去に2ヶ月分の賃料の滞納があり、その後も長期にわたりほぼ断続的に滞納を繰り返しており、契約が解除された以降も半年が経過しても賃料の滞納が解消されていない事案で、2ヶ月の滞納での契約解除を認め、新型コロナウィルスまん延によって信頼関係が破壊されていないという賃借人側の主張を排斥している。
東京地裁令和3年7月2日判決は、4ヶ月分の滞納があり、契約解除前に賃借人が1ヶ月分の支払をした事案であるが、新型コロナウィルスのまん延によって賃借人が無収入となったこと等から信頼関係は破壊されていないという賃借人の主張に対して、3ヶ月分の滞納賃料による賃貸借契約の解除を認めている。
過去に延滞があったという事情は伺うことができない。
以上です。