被害者の思い

中隆志

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 過去に担当させていただいた事件では、賠償額には無関係だが、加害者周辺の人物に対する法的責任を明確にしたいという思いの被害者がたくさんおられた。

 不眠不休で仮睡状態に陥り、児童の集団登校の列に自動車で後ろから突っ込んだいわゆる亀岡事件でも、加害者本人はいうまでもなく、同乗者の責任、その親の責任、自動車を貸した人物とその親の責任、加害者の親の責任について追及した。
 被告を多くしたからといって、賠償額に差異が出る訳ではないが、被害者の思いは、「なぜこの事故が起こったのか」「誰に責任があるのか」を明確にしたいというところにあることも多い。
 弁護士の方も手間がかかるし、証拠等も被告の人数分作成する必要があることから、事務局の作業も増える。
 賠償だけを考えるなら、不必要な作業だとも言える。
 しかし、そこを疎かにすることは決してしてはいけないことなのであると肝に銘じている。

 マイカー運転での会社の運行供用者責任も同様で、会社の責任を追及したからといって、賠償額が変わる訳ではない。
 先日判決が出た事案では、最初に依頼したホームページ上「交通事故の解決実績多数」という事務所の弁護士は、「会社の責任は追及できません」「会社を被告にしても賠償額は変わりません」「簡易に計算したところ、これくらいの賠償額となります」「刑事事件はついていきますが、特にすることはありません。検察官に任せておけば問題ないです」という態度であったということである。そのため、当該事務所については、解任して私のところに来られたのである。
 この事件では、被害者参加をして私は被害者参加代理人として出席し、実刑ギリギリの判決であった。
 賠償額も、「簡易な計算」よりも数千万円ほど多い賠償額が認められた判決を得て、会社の責任も認められた。

 私も不十分ではあるし、被害者の方も私に対する不満もあるかもしれないが、できるだけ被害者からそのように思われないよう、これからも初心を忘れず、被害者の思いに寄り添うことが大切であると思う年の瀬である。

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