読書日記「百年の孤独」
幻冬舎文庫。上下巻。桐野夏生。
筆者の本は年に何冊か読む。
人間の暗い部分を出してくるので、読んだあと、ずーんと気持ちが落ち込むのだが、物語の持つ力でしばらくすると、「ずーん」となるのは分かっているのだが、また読みたくなってしまう。
文庫の新刊として出ていたので読んだ。
海釣りに出たまま行方不明となった主人公の夫。そのまま死亡認定がされ、主人公は妻を亡くした歳の離れた夫と再婚する。
元夫の母親は未だ息子の嫁としての扱いをされ、歳の離れた夫の娘からの誹謗中傷を受ける。
歳の離れた夫との生活に対する苛立ち。
唯一の親友と思っていた弁護士からも挑発的な言葉が投げられる。
そんな時に、元夫に似た姿を見たという話が出てくる。また、元夫の母に無言電話がかかってきているという。
元夫は生きているのか。生きているとして、なぜ姿をみせないのか。
あるいはただのそら似で、無言電話もたまたまなのか。
主人公は元夫が何を考え、何をしていたのかを知ろうとする-。
人の悪意が交錯する佳作である。