在りし日の小次郎
何か新しい分野の事件があると、その分野の本は最低2、3冊買い、場合によれば市販のものを全て買うようにしている。
書籍が誤っていることもあるし、調べたい情報が1冊の本だけだと書いていないかもしれないし、記述が薄いかもしれないからである。
こういう買い方をしていると、中々よその事務所にもない本も本棚に並ぶことになる。もちろん基本的な解説書はそろえた上で、よその事務所にはない本が並ぶのである。法律書も、こんな分野の本はないよな・・・と思って調べると、ニッチな分野で学者の先生方が書籍を書いていたりする。プレミアがついて販売価格が数万円のものもあるが、調べたい病の私からすると、購入せざるを得ない。元々大量に流通することが想定されていないニッチな分野の本では、定価自体が1万5000円とかするものもある。
福知山花火大会の弁護団事務局長をした時には、「火災と刑事責任」「火災の法律実務」「過失共同正犯について」という本で主催者の責任が問えないか1週間くらい検討していた(結局訴訟外の示談で解決できたが。一部の本は中古しかなくプレミアがついていた。)。
ほかの火災事件では、「失火責任の法理と判例」で判例を調べていた(中古でしかなく、かなり高かった記憶である。)。
賃貸借の事件では、「平成時代における借地・借家の判例と実務」や、「建物賃貸借 建物賃貸借に関する法律と判例」でとっかかりがないか調べている(まあまあ高い本である。)。
婚約について研究したときには、「婚約・婚姻予約法の理論と裁判」で調べた。その事件はうちの紀弁護士が主任であったが、判例時報に掲載された。
医学書も数万円以上するものもあるが、医療過誤の事件をするときはその分野の本を多数購入して検討するので、あまり一般的ではない医学専門書が並んでいる。
時々本棚が見えた依頼者から、「本棚の本を全て読まれているのですか」と聞かれるが、そんなはずはなく、必要な箇所を調べてその部分をじっくり読むだけである。
中には一度も手に取ったこともない本もあるであろうが、調べないで事件はできないので、せこせこと本を買い続けるのである。