消滅時効に関する経過措置

中隆志

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 かなり前の交通事故で、重度の怪我を負われていたため、治療期間も長い方がいる。
 他の弁護士に依頼されていたのだが(ホームページでは交通事故専門とうたっていて、たくさん事件を受任している)、過失割合からすると、訴訟をしても自賠責の既払い金でゼロとなる可能性が高いから、最近、事件はこれで終了にしようと言われておられた。

 私のところに紹介されて来られたので、私の方で刑事記録を精査した。過失割合については判例タイムズの別冊のこの図に該当すると言われているということであった。
 しかし、全く前提が異なるし、当該図で過失割合を考える事件ではないものと考えられた。道路交通法からすると、相手の方の過失が明らかに大きいと考えられた(まあ、私の判断なので裁判所がどう判断されるかは分からないが・・・)。
 物損も請求すべき部分があったが、時効期間が遙か昔に経過していた。

 受任当初は、人身傷害部分も時効にかかっているのではないかと思った(普通であれば症状固定から3年以上経過しているため。)のであるが、「そういえば消滅時効期間が3年から5年になったので、経過措置があったな。」と勉強したことを思い出し、消滅時効期間に関する民法改正の経過措置を再度調べた。
 改正民法により、身体又は生命を害された場合の時効期間は5年とされており、施行日の時点で改正前民法の消滅時効期間である3年が完成していない場合には、経過措置により改正法が適用されるので、時効期間は5年となる。この案件では、この経過措置により、かろうじて人身傷害部分は時効期間が経過していなかった。それにしても前の弁護士は長期間何をしていたのかという話ではある。
 現在訴状起案中であるが、何年していても調べ物はきちんとしないといけないと思ったところであるし、そもそも物損部分を時効にかけてはいかんだろうと思っている。ご本人が懲戒請求をしたらアウトではなかろうか。その点については今後の要検討課題である。

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