在りし日の小次郎
紀伊國屋書店。ジョシュア・ハマー。
西アフリカ・マリ共和国中部のトンブクトゥは古くから栄え、イスラム文化が華開いた街である。
16世紀には多数の学校やモスクが建てられた学術都市であった。そのため、古文書が数多く各家庭で密かに守り伝えられていた。
主人公は、図書館員として、各家庭から血のにじむような努力で古文書を買い取り、図書館に納めていく。
図書館の建築などに各団体から寄付金が出てこれからという時に、マリ北部が過激派アルカイダにより制圧され、トンブクトゥもその支配下に置かれる。
イスラム原理主義者は、書物を憎み、書物を見ると焼いてしまう可能性がある。
主人公は、38万冊の街の図書を街から避難させる計画を立案し、現実にやってのけたのである。
カラーで少しだけ掲載されている古文書は見事というほかなく、こうした文化遺産が後生に残ったことは僥倖であった。
単に古文書を守ったという話ではなく、マリという日本から離れた国の世情やイスラム過激派の台頭など、日本にいては全く知ることのできない世界を描いた秀逸なノンフィクションである。