在りし日の小次郎
みすず書房。ジョアオ・ビール。
ブラジル郊外にあるヴィータとい名の保護施設がある。
行き場をなくした薬物依存者・精神障害者・高齢者がただ死を待つだけの施設である。
施設を調査する著者は、そこに入所していた不思議な誌を書くカタリナという女性やその親族からヒアリングを重ねていくうちに、新自由主義のもと、社会にとって不必要というレッテルを貼られて、社会から遺棄される構造を目の当たりにする。
カタリナは真実社会がレッテルを貼ったような精神障害者だったのか。カタリナの親族に問題はなかったのか。行政のあり方に問題はなかったのか。
著者は現代社会の歪んだあり方について、事実を重ねて丹念に切り込んでいく。
多くの賞を受賞した佳作である。