在りし日の小次郎
角川ソフィア文庫。石弘之。
コンパクトに感染症と人類との戦いを網羅した一冊。
新型コロナウイルスに関連して書かれた表題のように見えるが、実は新型コロナウィルスが出てくる前に書かれている。
人類と感染症とは、過去から現在まで闘い続けており、場合によれば総人口の何割もの人々が死に絶えたことなどが書かれている。
エジプトのミイラにも感染症の痕跡があるし、インカ帝国が滅んだのもスペイン人が持ち込んだ天然痘(インカ人には免疫がなかった)が原因といわれている。
第一次世界大戦を終わらせたのはスペイン風邪であるとも書かれている(日本語訳では、「風邪」とされているが、正しくはインフルエンザである。毒性が非常に強かったと言われている。スペイン風邪については、文春文庫の「四千万人を殺した戦慄のインフルエンザの正体を追う」に詳しい(私は修習生の頃ハードカバーで読んだ。)。
微生物と人間は戦うだけではなく、共存もしており、中々一筋縄ではいかないことも分かる。
感染症の入門書としては最適であろう。
また、今後世界中にパンデミックがまん延するとすれば、それは中国かアフリカからであろうと書かれており、新型コロナウイルスが出てくることを予言しているかのようである。
世界をパンデミックが襲ったのはこれが始めてではないことが非常にわかる一冊である。
読んでいると怖くなるが。
お勧めの一冊。