在りし日の小次郎
よくある事件類型として、被相続人の財産を相続人Aが使い込んでいたとして、他の相続人Bから不当利得返還請求をする類型がある。
私自身、この類型の事案で請求したことも数多くあり、請求された側の当事者の代理人となった事もある。
被相続人自身の認知機能が低下しており、同居しているみなし相続人が被相続人の資産を費消してしまう例ももちろんあるのだが、そのような状態で被相続人のために使っていたとしても、一つ一つの支出項目について説明ができない場合、立証ができず、敗訴するリスクはゼロではない。
中にはきちんと領収書を残して家計簿的なものをつけている方もおられ、資料を提示して「適切に使っていた」と説明してその点の問題がクリアされ、遺産分割がまとまった例もある。
被相続人の資産を預かり、それを自分のために好きに使うというのは横領なのだが、自分が管理しているお金をいつの間にか自分のもののように考えてしまう人が一部にいる。あるいは、必要に迫られて流用してしまうケースもあるだろう。
逆に、適性に管理され、帳簿もつけて、一切手をつけられない方もおられ、これは「やる人はやる」が、「やらない人は絶対にしない」としかいいようがない。当たり前のことで書くまでもないのだが。
兄弟姉妹同士であれば、多少怪しいお金の使い方があっても、「親と同居して面倒を見てくれたのだから、目をつぶろう」ということになることもないではないが、そこに兄弟姉妹の配偶者が関与して、意見を述べて、紛争が拡大することもある。
親と同居している場合には、金銭管理はよほど注意してやらないと、相続発生時に兄弟姉妹間で揉めることもあることは想定しておくべきであろう。
認知機能が低下してきた時には、後見人の選任も考えた方がよいかもしれない。
財産がなければ、このような問題も起こらず、逆に親に借金があって遺産の額を越えるようであれば、相続放棄をすれば足りるのであるが、退職金や年金で、節約して生活をされていて、本来なら現預金が残っていたはずのケースも割合にあり、これからもこうした事件類型はなくならないのであろうと思っている。