在りし日の小次郎
当方の依頼者が、賃貸物件から退去した後の保証金請求をしていた。
物件は京都で、依頼者も京都であった。
家主側代理人の方は、通常使用していた損耗以上の箇所があるとして、かなり保証金から差し引くという提案をしてきた。
明らかに、過大に差し引かれていたので、私の方で、相手の見積書に対して、一つ一つ反論をして、認める限度を通知した。
相手方の若い弁護士から電話があり、「双方の意見に隔たりがあるので、専門家の意見を聞いて進めたい。大阪弁護士会には示談あっせん制度があるので、それを利用したい。専門的知識を有する弁護士が間に入って調整してくれます。」という提案であった。
私は、「お互い弁護士だし、専門家ではないのですか。少なくとも私はそう考えています。私の方で一つ一つ指摘したことに対してそちらがどう考えているのか反論があればした上で、そちらの主張で、こちらが認める部分があるのか、ないのか。その上で調整して合意できるかどうかが次の段階ではないでしょうか。物件も京都で、うちの依頼者も京都で、しかもそちらの依頼者も京都なのに、どうして私が大阪弁護士会まで行かないといけないのでしょうか?」と話した。
そうしたところ、相手方弁護士は、「いや、大阪弁護士会には専門家が。。」というので、「それなら京都の示談あっせんでもいいのではないですか。そういう段階でもないと思いますが。そちらの方でこちらの主張に対してどう考えられるかをまず回答される段階ではないですか。」と言ったところ、「検討します」ということでいったん電話は終わった。
少しして、相手方事務所のボス弁から電話があった。
「中先生の方が、こちらからは譲歩した提案をしているのに、一切話合いに応じないと報告されたのですが、どこが問題でしょうか」
少し絶句したが、「困った若手弁護士が、どうしていいか分からず、ボスにウソの経過報告をしたのだな」と直ぐに気づいた。
私が、上記の経過を伝えた。
そうしたところ、相手方ボス弁はやはり若手弁護士から正確な報告を受けていなかったようで、「そんなことを言ったのですか」とのこと。
私「ウソをいう必要もありませんし、そちらの○○弁護士に確認されてはどうでしょうか。」
少しして、当該ボス弁から、「先生の言われたとおりでした。これからは私が担当します。私までご連絡ください」とのこと。
私からはこちらの見解は伝えているので、そちらから回答を待っている状態だと伝え、しばらくして、ほぼこちらの要求通りで示談ができた。推測するに、私から送付した文書を記録から抜いてボスに報告したのではないかと思っている。
教訓。
事件の経過は正確に報告しましょう。