事件によって力の入れ具合を変える弁護士

中隆志

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 私の元ボスは、着手金が1万円の事件でも5万円の事件でも100万円の事件でも、事件として受任した以上、必死に仕事をする人であった(いや、今もとてつもなく元気に生きていますけど、私が勤務していた時代ということで。)。
 私自身、弁護士はそういうものだと思って、元ボスのやっていたように事件に対応するようにしている。

 ただ、事件で相手方となったり、管財人等で他の弁護士の仕事を見ることがあるが、明らかに手を抜いていたり、事務局に丸投げしていたりしている弁護士が一定割合いる。

 訴額の低い事件であったり、債務整理系の事件であることが多いように思う。

 そういう仕事ぶりは、裁判所も見ているだろうし、相手方あるいは関与した弁護士も見ているものである。

 私は酒見先生(故人)という先生の弟子たちが形成している一門に属しているが、その中のある先輩に、「どんな事件でも手を抜いたらあかん。どんな事件でもその人にとっては唯一の事件や。訴額が低いとか面倒とかいう理由で手を抜いたらあかん。それはプロの仕事やない。また、そうした人にも知り合いや親族もいる。きちんとしていたら、そうした人が君のことを覚えていて、何かのときにあの弁護士に頼もうと思ってくれるかもしれん。自分にとってもそうすることがしんどいかもしれんけど、遠いようで近道なんや。」という趣旨のことを言われたこともある。
 肝に銘じて、やるようにしている(人間なので、できないこともあるかもしれないが、歯を食いしばって行こうと思う)。

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