在りし日の小次郎
ちくま文庫。高橋輝次。
机や筆記具などについて、文学者が書いたエッセイを集めた一冊。
作家だけに、机一つにも相当な思い入れがあったり、万年筆に対する思い入れがある。
谷崎の机が小さかったことに驚き、師匠から譲られた小さい机に、自分の大きな机を恥じる水上勉の話はいい。
まだ作家として独り立ちしていない時期に、原稿用紙代をまけてくれた文房具店の原稿用紙を使い続けたが、その文房具店が廃業した後、その作家がこの原稿用紙について書いた文章を読んで、その文房具店が再起を決めたという小檜山博の話は泣けた。これがこの本の一番いいエッセイである。
机周りが好きな人にも、そうでない人にも心が温かくなる一冊である。