寒波到来
文藝春秋。川上未映子。
この作者はデビュー作の表題が気に入らず敬遠していた。
先日短編集で作品を読んで、著者の言葉の織りなすリズムに快感を覚え、敬遠していたのもどうかと思い、新作が出たので読んで見た(村上春樹も最初敬遠していた。)。
私は読んでいないが、前半は乳と卵という筆者の作品のリメイクのようなことが書かれていた。まあ、読んでいないので私に取ってはどちらでもいいのだし、そんな予備知識はなくても読み進められる。
関西弁で会話がされているが、これが実に自然である。
夜逃げ経験があり、小説家を目指している主人公と、その姉、姉の子、そして、精子提供を受けて生まれてきた人々の思い、精子提供を受けて出産するということ、を中心に物語が綴られる。
個人的にはラストはどうなんだろうという気がしたが、これも読む人によって意見がわかれるところであろう。
全体的には非常に読みやすくて、言葉のリズムも快適で、一気に読んだが、物語的にラストについては私はアナザーエンディングがあってもよかったのではないか、と思った次第である。