寒波到来
ジョン・チーヴァー。新潮社。翻訳は村上春樹。
短編作家であるが、日本ではきっとそれほど知られていない作者の作品集(私だけが知らなかったのだろうか・・・)。
同じようなシチュエーション、場面設定で、全く違う物語が展開される。
どの作品も、あるべき姿から外れていく人の姿が描かれているように思われる。
どこかで歯車が狂い、その人の人生に暗い影が差していく。
あまり明るい終わり方はしないので、読んで気分が晴れやかになるという作品ではないが、どこか、引っかかるところがある作品が多かった。
私が最も印象に残ったのは、富豪の家のプールを泳いで、自宅のプールまで行こうとする「泳ぐ人」。それだけで何か狂気のようなものを感じる。彼がたどりついた家で待っているものとは。
全てを投げ打って田舎から出てきた作家になろうとする男の家族を都会で待ち受けるものとは。「ああ、夢破れし町よ」。
お互いに昔から知り合いの男女。女性はダメな男ばかり愛してしまう。病に倒れた男をかいがいしく女性は介抱するが、彼女の求めるものとは何だったのか。「トーチ・ソング」。
妻が子どもを連れて出ていった男。1人で暮らす彼の自宅を深夜のぞき見る目が。。。「治癒」。
など、多くの短編が収録されている。
村上春樹訳というのがまたいい。
たまには違う文学を読んで見たい人にはお勧めである。