寒波到来
小さい頃、町内には怪しい空き家がどこの町にも1軒くらいあったが、最近は空き家が増えたので、珍しくもないのかもしれない。
子どもの頃、公園の裏手に空き家があり、公園の塀をよじのぼってそこの空き家に入り込んで遊んでいた。
塀もボロボロで、公園の塀からちょうど2階に入れたのである。
空き家だと思っていたのであるが、一度、白髪の老婆が中にいて、コラー!!と追いかけてきたことがあった。我々はそれこそ魂が口から飛び出たのではないかというくらいビビってしまい、まさに蜘蛛の子を散らすように逃げたのであるが、あれは、あの家の所有者であったろうか。
あるいは、偶々家のないおばあさんがそこに住み着いていたのか。
それ以来、恐ろしくなり、誰もその空き家に入ろうとしなかったのであるが、子どもなので、あのおばあさんはあのうちの中で死んでいたとか、あのおばあさんは幽霊だったとか、適当なデマがとんだものである。
真実はわからないが、空き家が増えると、おどろおどろしいあの感じがなくなってしまうのかという気がしている。
今読んでいる「ペンギンブックスが選んだ日本の名短編29」という短編の中の、「物理の館物語」という作品を読んで、小さい頃のことを思い出したのである(また、読書日記で書くが、村上春樹が冒頭で解説をしていて、なかなかいい短編集である。)。