寒波到来
新潮文庫。吉村昭。上下巻。
シーボルト事件で有名なシーボルトには娘がいた。
その娘の数奇な運命を通して、幕末から明治にかけての壮大な物語が描かれる。
吉村昭の無駄を省いた文体で描かれる。吉村昭、やっぱりいい。
吉村昭の最も長い長編ということであり、上下巻で1300頁くらいあった。
混血児として、様々な苦難の中幕末から明治を生きたイネの一生が描かれる。
読むにも時間を要したが、これも一読して然るべき一冊である。
主人公のイネは、司馬遼太郎の「花神」では、主人公の村田蔵六の愛人として描かれたが、この作品ではそこがどうであったかも下世話な話題としては気になるところである。