本当に必要ですか?そのリース、クレジット契約!

中隆志

中隆志

 平成17年の5月に、私が声をかけて電話リース被害京都弁護団を結成し(以来、事務局長である)、その後、被害対象品目が電話機だけにとどまらないようになってきたので、名称をリース被害京都弁護団に変更し、クレジットの被害も多数見受けられたため、現在はリース・クレジット被害京都弁護団に名称を変更している。
 
 零細な事業者に、「電話代が安くなります」「NTTから来ました。今使用されている電話機が使用できなくなります」ということで不必要な電話機をリース契約させていたのが初期の頃である。前のリース契約を解約して乗せ替えて、次のリース料に組み入れるなどして、手元には電話機が1台しかないのに、毎月のリース料の支払いが6万円などという例もざらではなかった。
 そのうち、リースの対象品目が多岐にわたるようになる。複合機やセキュリティシステム等、何でもかんでも「コピー代が安くなります」「セキュリティが必要です」などといって契約させるのである。SEO対策ソフトも多く契約させられていた。
 販社が営業に来て、リース会社は電話で確認するのだが、既に騙されている当事者は販社に「ハイ」というように指示されているから、ハイと言ってしまうのである。
 こうして契約したリース契約は、途中解約できない。営業のものとして契約したものでなければ訪問によるリース契約ということで、特定商取引法によるクーリングオフで白紙撤回できるが、裁判所が考えるクーリングオフのハードルが高いため、中々訴訟では認められないことも多い(もちろん、弁護団では、勝訴例や、訴外での和解実績は多数あるが)。
 販社はリース会社の代理人と考えるのが常識にかなうのだが、裁判所は基本的にこれを認めない。訴訟では、リース会社は、「詐欺だとは知らなかった」といえば基本的に勝訴する構造である。そのため、被害者側は、リース会社が認識し得たということを主張立証することになるが、このハードルも高い(認識しえたということで勝訴したケースもあるが)。
 キャッシュバックといって、販社が自転車操業をするためにリース料相当額を振り込むので契約して欲しい、損はさせないと言って契約させるケースもある。販社は契約が成立すると、リースの対象品の代金を一括でもらえるため、当面の運転資金が確保されるので、こうして自転車操業をしていくうちに、販社が倒れると、残っているのはリース料金だけということになる。
 クレジットは、販社が売却した対象品の代金をクレジット会社が立替払いするだけで、基本的構造はリース契約と同じである。クーリングオフの適用がない場面も同様。

 そして、被害に遭った零細事業者を見ていると、必要のないものを契約させられていることが多い。一人法人なのに、120回線内線が引けるビジネスホン。コピー機を使ったことのない事業者(1ヶ月に一度ファックスは使うとしても、家庭用で十分)。セキュリティシステムが入っているが、センサーのついていない窓がある、インターネットにつないでいないのに、大手企業が入れているようなネットワークシステム等々。

 一度印鑑を押してしまえば、解約することは相当困難であり、弁護士を依頼すれば弁護士費用もかかるのである。
 印鑑を押す前に、弁護士に相談してもらった方がいいとすら考えているほどである。
 零細事業者に訪問販売に来る販売店の勧める商品は、本当に必要かどうか、よくよく検討して、場合によれば、契約する前に弁護士に相談していただいた方がいい。
 それほど、詐欺商法がまかり通っているのである。

 なお、立法案も作成し(私が作った訳ではないが、京都が日本で最初に提案した)、相当前に、経済産業省にも行ったが、業界内で自助努力をしているというのが経済産業省の回答であった。
 弁護団結成から13年が経過したが、未だ、零細事業者のリース被害、クレジット被害はなくならない。事務局長兼弁護団創設者として、大変憤りを感じる日々である。
 一つの問題は、この手の事件を担当できる弁護士も数があまりいないというところもあるが、理論が精緻化されており、弁護団員でないと中々主張立証も難しくなっているというのが実感である。
 とにかく、ややこしい契約には、印鑑は押さないことが何より重要である。

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