在りし日の小次郎
早川書房。マーティン・アッシャー。村上春樹訳。
レイモンドチャンドラーのマーロウものの中から、人生に相通ずるようなフレーズを抜き出した一冊。短編も混じっている。ただ、高い窓とプレイバックからはなぜか引用がないということで、訳者後書きで村上春樹がいくつか2作品から追加している。
私はチャンドラーの作品はマーロウもの以外の短編も全て読んでおり、チャンドラーの生涯を描いた作品や、チャンドラーのエッセイ本も全て読んできたので、こういう作品はとにかく飛びついてしまうのである。
村上春樹の訳もよいが、何よりチャンドラーの名文が素晴らしい。
大学時代にチャンドラーの長編を全て読み、弁護士になってから短編集を全て読み、村上春樹訳でさらにもう一度長編を読み返したが、孤島にどれか一人の作家の作品を持っていくことしかできないが、どれを選ぶかと言われれば、迷うことなくチャンドラーを選ぶであろう(村上春樹訳は、ハードカバーで一度読んだものを、文庫本が出たらもう一度飼って見返している)。
チャンドラーを知っている人生と知らない人生とでは、違ったものであるはずである。
お勧め本である。