在りし日の小次郎
青土社。ロブ・ダン。
世界の食糧の需要をまかなうために、単一化、一部の食料に相当なカロリーに頼っているのが現在の世界の食糧事情である。
単一化された食料は、その単一化された食料に対する害虫や病気が現れた時に、一気に死滅してしまう。
過去にアイルランドで単一化されたジャガイモが死滅した際に、大量の餓死者が出たという実例が記載されており、今、この世界でも同様のことが起こっても不思議はないという。
これに対するアプローチとして、大量の殺虫剤を撒いたことで、耐性のある害虫が出てきてはこれを駆除するための殺虫剤を作るといういたちごっこを続けていたり(しかも、害虫を食べる益虫を死滅させて、害虫がさらに大量発生することもある)、遺伝子工学により害虫や病気に対する耐性を持つ食料を作り出したり、害虫に対する耐性のある同系統のたとえば小麦を掛け合わせるなどがある。
しかし、食料を大量に生産する企業は、大量の収穫が得られる品種ばかり生産する傾向があるため、いつまた新たな害虫が出てくるか、という問題からは逃れられない。
作物には、多様性のあることが重要である。ある一つの品種が壊滅しても、外の品種が栽培できる上、掛け合わせることで耐性のある品種を生み出すこともできるからである。
しかし、これまではその重要性に気づいていたのは、ごく一部の植物学者だけであった。
第一次大戦中、そのための種子を守り、目の前に食べられる種子があるのに餓死していったロシアの植物学者たちの物語は胸を打つものがあった。
未来の子孫が安定して食料が食べられるよう、植物学者たちは乏しい予算の中で種子を守ろうとしている。
我々人類の未来に警鐘を鳴らす作品であり、今の世に生きる我々が読まなければならない一冊である。