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早川書房。ハンネス・ロースタム。
連続殺人犯として有罪を立て続けに受けたトマス・クィックという殺人犯。
真実彼の犯行なのかどうか、疑念を抱いた著者は膨大な資料を基に彼が本当に連続殺人を犯したのか、あるいはこれは彼の大いなる虚言なのかを見極めるべく、調査を重ねる。
無実であるとすれば、なぜ裁判所はそれを見抜けなかったのか?
捜査の過程で一体何があったのか?
仮に無実であるとすれば、彼はなぜこのような虚言を吐き続けたのか?
実は、無実であるということ自体がまた大いなる虚言なのではないのか?
もう少しスリムにできたところもあったとは思うが、変な推理小説を読むよりも面白いノンフィクションである。
残念なことに、これだけの調査報道ができる能力があった著者は、この本の完成とともにガンでこの世を去った。
生きていれば、もっと素晴らしい調査報道ができたであろうに、残念である。
日本では足利事件の再審のきっかけを作った、清水潔氏の「殺人犯はそこにいる」(新潮社)が調査報道の金字塔の一つだと思われるが、この作品も非常に面白い。
こういう分野が好きな方は、是非一読をお勧めする。