読書日記「警視庁生きものがかり」

中隆志

中隆志

 講談社。福原秀一郎。
 現職の警官である筆者が、絶滅のおそれのある動植物の密輸・売買事件の黎明期から、現在に至るまでの事件について語るノンフィクション。
 ドラマがあったようであるが、私はドラマはほぼ観ないので、ドラマを見たから買った訳ではなく、小次郎(二代目)だけではなく、純粋に生き物が好きだからである。

 警視庁のここに至るまでに苦労や法改正の努力なども語られるが、何よりも筆者の生き物に対する愛情がなければ、この仕事でここまでの成果は出せなかったであろうとその人柄にもほっこりとさせられる。

 ニホンオオカミやニホンカワウソしかり、その他の絶滅した動物しかり、こうした書籍を読むと、絶滅するおそれがあっても、金銭欲のために動植物を密輸し、販売する人間の業というものはいかに罪深いものかということを思い知らされる。そうしたことが業務として成り立つのは、絶滅するおそれのある動植物であっても自らのものにしたいという果てしない欲がある人間がいるからである。
 そうした人間の業から守られて、一つでも多くの種が、生き残って生物多様性を維持していけることを祈念する次第である。

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