書面を書く時
旬報社。宗像充。
ニホンオオカミは絶滅したというのが一般的認識であるが、生き残っているという目撃談や遠吠えを聞いたという報告も多い。
秩父野犬と名付けられたオオカミに酷似する写真は有名であるが(今泉博士という方がニホンオオカミの生き残りの可能性ありとしている)、そのほかにも九州で撮影されたオオカミらしき写真もある(いずれの写真もこの書籍に掲載されている)。
著者は、ニホンオオカミと呼ばれるオオカミの実像が実は話をしている者によってあいまいであることや、日本には実は「オオカミ」と山犬と呼ばれる二種類いた可能性も示唆する。
何と、シーボルトが、二種類飼っていたという記録もあるのである。
ニホンオオカミは固有種ではないとして、日本にオオカミを放せば生態系が維持されるという説があるが、本当に同種なのかという疑問もこの書籍では呈される。
実はまだ読めていない本として、「オオカミが日本を救う!」(白水社、丸山直樹著)という本があるのだが、その本も後日読んでオオカミについての知識をさらに深めたいところである。
この中で出てくる秩父野犬を撮影した八木氏は、フィールドに撮影機を多数しかけて、ニホンオオカミの生存を証明しようとしている人である。NPO法人ニホンオオカミを探す会を立ち上げ、週末にオオカミを探しに出かけられている姿が描かれている。
秩父野犬の写真を見たい方は、NPO法人のホームページで鮮明にみることができる。
そして、筆者も犬とは違う、「秩父野犬」を目撃するのである。
面白すぎる一冊であり、絶滅という国の定義のあいまいさなども含めて(ニホンカワウソも高知では未だに目撃されているらしい)、私としては、ニホンオオカミが今も日本の山奥で生き残っていると信じたい。
そして、人間の業の深さを思い知らされる一冊でもある(六度目の大絶滅、NHK出版。エリザベス・コルバート著、を書籍を読んだ時と同じ思いである)。
しかし、人間の業の深さの中、生き残っていてくれれば、これほど嬉しい話はない。
時間があれば、私もニホンオオカミを探しに出かけたい、そう思わせられる一冊であり、一読の価値ありである。
読書の楽しみを教えてくれる一冊。