弁護士のメンタルヘルス

中隆志

中隆志

 紛争のただ中に置かれる弁護士は、精神に変調を来したり、場合によれば自らの命を絶ってしまう場合がある。
 私自身は元々呑気な性格であり、元勤務弁護士であったK弁護士からは、「京都弁護士会で最後にうつ病になる男」と言われていたが、私からすると最後にうつ病になるのは元勤務弁護士のKではないかと思っている。

 生来の性格や人生経験もあるであるから、こうすれば大丈夫というのはないのだが、いくつかあげるとすれば以下のようなものであろうか。もちろん、これが正解というのはないので、あくまで私が考えるとしたら、であり、医学的根拠は全くない。
 ただ、こうやっています、というので、若手が心が苦しい時の助けになればと思い、書いておくものである。
1、依頼者のために頑張ることは大事だが、一体化しない。
 依頼者の抱えておられる悩み、苦しみを理解しようとし(本当に理解などはできず、推測するだけであるが)、その依頼者の状況を改善してあげるために法的に知識を駆使し、頑張ることはプロとして当然ではあるが、依頼者と一体化すると、複数の紛争の持っている負のパワーが精神や身体を蝕むと考えている。
 法律家が努力をしても限界もあることを知り、弁護士としてできることを知ることである。
2、何もかも忘れる瞬間を作る。
 これは、私であればサッカーであったり、読書(漫画含む)にのめり込んでいる時間であったり、ゲームをしている時間であったりする。釣りもあまり行けていないが、同じである。
 それに集中して何も考えないことが、ストレス発散になるのだと思っている。
 きっかけは小さなことでいいので、何かやってみるように心がけることである(精神疾患を発症してしまうとやる気もなくなるので、そうなる前の心がけとして書いている)。
 そのうち、自分に合うものが見つかればしめたものである。
 パチンコをしている人達も、その時間帯は何も考えていないと思う(私もそうだった。行かなくなってもう25年ほどになるが)。
3、同業の人に会う
 一人で仕事をしているとやはりうっくつしてくるので、「忙しい」「忙しい」とばかり言っていないで、同業の集まる会合などには出ていき、守秘義務に反しない程度で愚痴をこぼすことである。解決策を先輩が示してくれたり、後々役立つアドバイスをもらえたりすることがある。
 話を聞いてもらうと、解決していなくとも、気が晴れるものである。
 お酒が飲めなくても、ワイワイするのは大事である(私のように時々飲み過ぎるのは問題である。カラオケも好きな人は大きい声を出すことで発散になる)。
 友人と美味しいものを食べに行くことも大事ではないであろうか。
 もちろん、同業以外の人と話しをするのも大事であるが、同業でないと分からないこともある。
4、癒やしの時間を持つ
 私は動物が好きで、フェイスブックでそういう動画に「いいね!」を押し続けた結果、今では流れてくるタイムラインの半分以上が動物動画である。しかもかわいいヤツばかり。
 仕事が優先であるので、見る時間は朝起きて葉巻を吸っている間とか、通勤で読書に疲れた時とか、昼休みなどに限定しているが(けっこう見ているやんかと突っ込まれるかもしれない)、好きなものを見ていると癒やされる。
 動物写真集なども癒やしである。
 私にとって最大の癒やしは小次郎(二代目)であるが(嫌なことがあった日も小次郎が「ハーン」という感じで小次郎が飛びついてくると、嫌な気持ちが軽減される)、自宅で動物を飼えない場合もあるだろうから、できる範囲で癒やしを求めるのが大事である。
 以上のようなことを特段意識してやっている訳ではないが、一応、22年間精神的には全く問題なくやって来られている。私も弱い人間であるのでこの先どうなるか分からないが、元々人の心は弱いもので、その弱さをどう克服するかということが大事ではあるから、心を鍛えることも大事ではあるけれども、いわば逃避も大事ではないかと思っている。
 人間は大自然の中でもストレスを感じると言われているので、ストレスとどう付き合うかは人間の根本にあると思うのである。

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