書面を書く時
P+Dbooks。福永武彦。
最近感銘を受けている福永武彦の短編集である。
絶版となった作品をペーパーバックで復刻しているものであり、「海市」「風土」「夜の三部作」などが既に発売されている(全て読んだ)。他の作家も復刻されているようである。
古本屋市場で探せば読めないことはないが、せっかくなので綺麗なものを読みたいと思うので、こうした復刻は大歓迎である。
収録されている短編集の中では、「心の中を流れる川」「世界の終わり」の二編がよかった。
心の中を流れる川は、夫との間が冷え切り、夫はやり直せると信じているが、妻の方はそんな考えは全くないという夫婦の間の物語で、そんな義理の妹をやきもきしながら心配している神父の兄もそこに絡んでくる。
題名を見ただけで、読みたくなるような題名で、特に表題作の表題など私にはとうてい思いつかない。日本語の持つリズムというか、言霊を感じるのである。
まだ福永を読んでいない人がいれば、是非読んでもらいたいものである。