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中央公論新社。墓田桂。
EUに押し寄せる難民や、シリアの現状、その他の難民問題について、200頁少しにコンパクトにまとまっている好著である。
現在、難民を受け入れることを拒否し、自国中心主義を掲げる政党がなぜ支持を得ているのか、これを読むとその背景がわかる。
人道主義・理想主義の限界とその中でいかに難民を救うべきか、著者は、この書籍が「葛藤」によるものだとあとがきに書いているが、理想主義を述べるでもなく、かといって難民はもう保護しなくていいという立場でもなく、現実にどのようにすべきかということを苦しんで議論されていると感じた。
難民の受入に対して、人道主義的にリスクがあっても受け入れるべしという議論がされることがあるが、その場合に、自国の国民がさらされる問題についてどう考えて行くべきかということは、感情的に難民は救護すべきだという考えだけではどうにもならないことを考えさせられ、暗澹とする一冊である。