犯罪被害と量刑

中隆志

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 厳罰化によって犯罪はなくならないといわれたり、厳罰化することによってより犯罪を隠そうとすると言われるが、いずれもこれは加害者に向けた視点である。
 被害者の思いという視点はない。
 被害者の思いからすれば、自ら(あるいは遺族の場合は自分の親族)を傷つけた加害者に対して、1日でも重い刑を科して欲しいと思うのが通常ではないであろうか。
 歌手の女性に対して重度の後遺症を負わせた殺人未遂事件では懲役14年6月という量刑であった。
 一生残るであろう後遺症を負わせた加害者に対して、軽すぎる量刑といわざるを得ない。
 報道されている法廷での態度は、とうてい反省しているとは考えがたいのである。

 かつて私が担当した傷害致死事件では、法廷で踊りを踊ったり不規則発言を繰り返した被告人は、殺人よりも重い刑(少し記憶が怪しくなっているが、亡くなったのは一人で、懲役18年であったと思う)に科せられ、控訴審でもその量刑は維持された。
 通常の量刑相場からすれば相当重い量刑であったが、量刑というものは、やはりその事案に応じて判断がされるべきものなのであり、先例に縛られすぎるというのもどうかと思わざるを得ないのである。死亡していると命が助かっているという違いはあれ、故意の殺人ではなく傷害の故意であった事案からすれば、相当な量刑であったことは間違いない。

 量刑に幅がある以上、個別の事件に対して、よりふさわしい量刑を考える姿勢が裁判所並びに求刑をする検察官に求められるのではないか。
 かつて私が若い頃、京都地裁に交通事故の事件に対して非常に厳しい裁判官がいたが、その裁判官の判決は聞いていて、なるほどと思わせられるところが多かった。
 被害者は自力救済ができないのであるから、刑事事件の中で、その思いと被害結果を裁判所がくみ取るしかないのである。
 
 日弁連は基本的に厳罰化に反対する姿勢を取るという認識であるが、全ての会員がそうした思いでいる訳ではない。

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