読書日記12月27日

中隆志

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「プレイバック」早川書房。レイモンド・チャンドラー。村上春樹訳。
 村上春樹訳によるチャンドラーの長編の6作目。
 これであと訳されていないものは、「湖の中の女」だけとなった。

 「タフでなければいきていけない。優しくなければ、生きている資格がない」というセリフだけが注目されてきたこの作品であるが、マーロウものの中では評価が低いようである。
 完成された作品としては実はチャンドラーの遺作であり(プレイバックの続編であるプードル・スプリングス物語を書き始めて途中でチャンドラーは亡くなったためである。これはロバート・B・パーカーが完成させて早川文庫から発売されている)、もつと注目されてよいと思うのだが。
 マーロウがやや大人しくなってしまったところがファンには物足りないのであろうか。
 マーロウの女性に対する騎士道精神や一匹狼的なところはいささかも衰えておらず、ただ、「大いなる眠り」などのようなドンパチがないだけであり、本質は変わっていないのであるが。
 孤島に行かされることとなり、好きな本を10冊持っていけるとなれば、そのうち7冊はマーロウの長編にするであろう。
 マーロウを読んで人生が激変するとは思えないが、マーロウを読むことのできる人生は、そうでない人生よりも違ったものになると、村上春樹のいうように私は信じている。

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