読書日記8月19日

中隆志

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「夜の三部作」小学館P+DBooks。福永武彦。
 今では入手することが難しい名作をデジタルとペーパーバックで復刻する素晴らしい試みをしている小学館のシリーズで、最近傾倒している福永武彦という作家の短編集である。
 ただし、作品にはつながりはない。
 解説は芥川賞作家で実子の池澤夏樹氏。

 最初の冥府という作品は、解説のいうように、確かに設定が単調で、他の二作品に比べると見劣りするが、これとても味わいがある作品である。
 二作目の深淵という作品は、池澤夏樹個人編集の日本文学全集にも入れられており、最近読んだばかりなので、再読はしなかったが、その構成といい、結末に向かうテンポといい、名作にふさわしい一作である。
 三作目の夜の時間という作品は、主要な4名の登場人物の心の動きを追いつつ、過去と現在を行き来するという作品で、読み終えた後、幸福を得た人物と幸福を失った人物とが対比され、非常にもの悲しくなる一作である。
 ネタバレを恐れるあまり中身に立ち入れないが、これは是非読んで欲しい一冊である。
 値段も税込で702円とお得である。

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