読書日記7月15日

中隆志

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「海市」P+Dbooks 小学館 福永武彦。
 最近福永武彦という作家を知り、その作品をいろんなジャンルの本の合間に読んでいる。
 ペーパーバックで発売された表題作は、いい作品であるのに入手困難となっている作品をペーパーバックで出版するという小学館の試みである。
 解説は実子で作家の池澤夏樹氏。

 海市(かいし)とは蜃気楼のことである。

 画家の主人公は妻とは離婚寸前で、精神の癒やしを求めて、また、絵の原案を求めて旅行に行くのであるが、そこで不思議な女性と出会う。
 彼女の名前は安見子といい、主人公はその女性と関係を持つが、その女性は彼の前から消えてしまう。
 後に彼女は親友の妻であることが分かるが、彼と安見子は逢瀬を重ねていく。
二人の愛の行き着く先はどうなるのか。
 500頁ほどの作品であったが、一気に読んだ。

 小説としての技巧も感嘆するばかりであり、こういう小説を読むと昨今の文学で読める物は限られるという気になる。
 おススメの一冊である。

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