読書日記「凱風館日乗」
「草の花」新潮文庫。福永武彦。
先日読んだ福永武彦という作家の作品がよかったので長編も読んでみることにした。
自殺とも思える無理な手術をして死んだ主人公が残した二冊のノート。これを託された筆者はそのノートを読んでいくという流れで構成されていて、小説としての技巧も完璧である。
純粋すぎる主人公とその深遠な孤独と絶望と愛を描いた作品であり、こうした作品は初めて読んだ。
戦争で兵役に取られる暗さとともに、救われることのない物語であるが、読んでいない人には是非福永武彦という作家を薦めたくなる。