多忙自慢

中隆志

中隆志

 若い弁護士が集まると、だいたい自分がどれほど大変かということで多忙自慢大会が始まる。
 若くない弁護士でも、Twitterやフェイスブック、ブログ等で多忙であることを告白していることが多い。

 そういう人にたまたま会って、どれくらい忙しいのか聞いてみると、さほどでもなく、私の方が手持ち事件も多いし、弁護士会の委員会の委員長もしているし、日弁連の委員会の役職もしているし・・・ということで、「忙しさ」というレベルでは私の方が上ですね、という話になることもあったりする。

 忙しさというのは、ある程度主観にも左右されるところであるし、その人の能力、仕事のやり方にも左右されるところであると思っている。
 昨日徹夜したという話があるが、ぎりぎりまで何もせず、普段はコーヒーを飲んでネットサーフィンをしているのだが、直前になりやったという話なのかもしれない。
 移動が多いとか大型事件が入ってきたとか、物理的忙しさというのはあるし、過労死しては何もならないので、実際に忙しい人がいることも分かるが、「忙しい」というのを聞いても人はあまりいい思いはしないとも思っている。

 忙しいと言ったところで、その忙しさが変わる訳でもないので、飲み仲間うちで愚痴をいうのはいいとしても、あまり全世界に向かって公開、宣言するのはどんなものなのであろうと思っているのである。

 昔読んだ漫画で、「忙」というのは「心」を「忘」れるという漢字であり(実際にそれが成り立ちとして正しいは調べていないが)、心を忘れている状態です、というのを自慢げにいうのは、あまり好ましいことではあるまいというのが私の最近の考えである。

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