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9位。
「峠」(上)(中)(下)。新潮社文庫。司馬遼太郎。
司馬が主人公を描いた作品として、「英雄児」という短編があるが、その短編と比較して読んでも面白い。
河合継之介という長岡藩家老に後に就任する快男児の生涯を描いた作品であるが、もちろん小説であるから史料に基づかない記載や司馬の解釈が入っていることは間違いないとは思う。
また、河合の死後の扱いについても、短編では書かれているが、こちらの長編では書かれておらず、「英雄」として死んでいる。
男子として司馬が考えていた生き様・死に様が書かれているように思われる。
ただ、河合の生き方によって、長岡藩の住民はとてつもない被害を受けており、死後、河合を恨む声があったであろうことは当然であろうと思われる。
生まれるところを間違えると、とてつもない災厄をまき散らすというような趣旨のことを司馬も書いており、単に賞賛して書かれた小説ではないことは間違いなかろう。
長岡藩の住民にとっては悪魔であったろうし、官軍にとってもそうであったろうが、小説の中では最後までその生き方を貫いていて、男子としての生き方を考えさせられる一遍である。