名誉毀損の弁論

中隆志

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 弁護士が代理人として行った訴訟活動が相手の名誉を毀損するものだとして、後に賠償責任が認められるケースがある。
 私も過去何度かそういう書面が相手から出されて、その都度指摘して、撤回させたり、裁判所がその部分を陳述扱いさせないという対応をされたケースがある。

 私は個人的には激越な言葉は準備書面には不要と思っている。
 私が相手に指摘する際に参考にしているのは、「弁護士の役割と倫理」(商事法務、中央大学法科大学院教授・弁護士・日本弁護士連合会綱紀委員会委員長を務められた田中紘三 著)であり、同著では、相手方弁護士の法的主張を酷評する場合には,名誉毀損の弁論に近づいているとされている。
 同著では、一例として、相手方代理人の法的主張に対して、「無礼」「笑止千万」「知らぬ顔の半兵衛」「詭弁」「蛙のツラ」等をあげている(同著357頁)。
 事件をしていると、こういう表現を多用してくる書面に出会うことがままある。

 裁判官と話をしていると、こういう表現がされていると、やはり当該書面に対していい感情は抱かないし、単に読みづらいだけであって、無用であるという意見を持たれている。
 同じことをいうにも、表現のしようがあるだろうと私も個人的に思っている。

 この手の表現が多用されていると、それだけで書面が長くなったりするので、依頼者からタイムチャージで費用を取るため、長くするために書いているのかという疑念をもつこともある。
 裁判上無意味であったり、名誉毀損になりうるような表現は用いるべきではない。場合によれば代理人の懲戒事由にもなる。
 えてして、この手の書面は大げさな表現を取り除くと、半分程度の長さで済むような内容であることも多い。
 裁判官からしても、無用の記載があると、重要なところの見落としがあるかもしれない。
 若い弁護士がこうした表現を好む傾向にあるが、激越な表現は自信のなさのあらわれととられることもあることに注意をした方がよいであろう。

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