カルテに埋もれた一週間

中隆志

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先週はカルテばかり読んでいた。

1件は交通事故の被害者側で、保険会社の方の「それほど重傷ではない」「後遺症の程度はこの程度である」という主張に対して反論をするもの。
 1件は交通事故以外の事案で、相手から出されたカルテに基づいて、「そんな症状は出ていないか、別の原因である」という主張を整理するもの。
 1件は当時遺言能力があったかについて、カルテの中から拾い上げるもの。

 読むだけでなく、書面の形にしなければならない。カルテを引用しつつ、準備書面の形にしていくのであるが、これはけっこう大変な作業である。
 しかし、見落としていたところにこちらに有利な記載があるかもしれないので、1頁1頁目を通していくしかないのである。また、医者の字は汚いことが多く、判読に苦労することもしばしばである。
 弁護士というのは、依頼者との打合以外に、裏でこうした地道な作業をしているのであるが、これが中々依頼者にわかりにくいところでもある。
 
 ここまでまとめてカルテばかり見ていたことも珍しいので、今週はカルテは読みたくないくらいなのだが、事件は待ってくれないから、また、そのうちにカルテと格闘する時がやってくるのである。
 ただ、こちらにとってカルテにいい記載があることを見つけた時には、嬉しくなることもあるので、嫌なことばかりではない。
 普通の弁護士は依頼者にとって何がいいか、何か有利なことはないかと真剣に影で努力しているのだが、そういう弁護士ばかりでもなく、また、それが裁判官に伝わらないこともあるのが裁判の世界でもある。

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