読書日記「百年の孤独」
司馬遼太郎の峠(新潮文庫)を読み始めている。
まだ上巻を少し読み始めたところだが、非常に心打たれるフレーズがあったので、以下に引用する。
「志の高さ低さによって、男子の価値がきまる。このこと、いまさらおれがいうまでもあるまい」
…中略・・
志は塩のように溶けやすい。男子の生涯の苦渋というものはその志の高さをいかにまもりぬくかというところにあり、それをまもりぬく工夫は格別なものではなく、日常茶飯の自己規律にある、という。
以上、引用終わり(新潮文庫版、司馬遼太郎、峠、上巻より)。
仕事をしていく上で、弁護士も志が必要である。
そして、その志を貫くためには、常に普段の自己規律が必要であるといえる。
日々の何気ない自己規律の繰り返しでもって、弁護士としての志が守られるといえる。
ガンで身体中の痛みに耐えながら尋問事項を病室で考えていた先輩のH先生、ベッドごと事務所に運べと死ぬ間際まで言っていたN村先生の生き様は弁護士としての自己規律に貫かれていたであろう。
さすが司馬遼太郎である。司馬遼太郎の作品は人生において読まなければならない作品の一つである。
人間というものは、安きに流れるものである。
私も人間として、仕事中、通勤途中で読んでいた破格に面白い本の続きが読みたいという欲求や、この程度でいいかなと思う弱い気持ちやその他の誘惑に負ける気持ちが出てこないわけはない。
それをぐっとこらえて、不断の自己規律によって、依頼者のために仕事をするというのが重要なのであろう。
私が出来ているかどうかはともかく、いいフレーズに出会ったと思う。
出来ているとはいえないが、出来るように努力しよう。
私の名前には「志」が入っているので(時々、歴史の史にされたり、間違われるが、中隆志の「シ」はこころざしなのである)、よりそう思った一文であった。
やはり本はいい。