寒波到来
事件というものは個別性があるし、依頼者もそれぞれ異なっているし、相手方の主張立証によって都度事件というものは見直さないといけないものである。
事件の類型により、この事件はこの程度、この事件はこういう事件だからこういう主張立証といわばルーティンワークのように仕事をしていると、いい結果は出ないと思う。もちろん、必死にやっても結果が出ないこともあるのだが。
事件の途中で、この事件はこういう事件だからと考えてしまい、思考停止になり、相手方から有効な反証や反論が出ているのに、これに対する再反論や反証も出さないということもあり得る事態である。
弁護士経験がある程度長くなってくると、事件に馴れてしまい、こうした訴訟活動を行っている場合がある。
私のボスは、どれだけ訴額が小さい事件でも、常に何とかならないかと考えていたし、今もそうだと思う(ただし、ボスが主任の事件。勤務弁護士が主任はその責任でやるべきという考えだったと思う)。
絶対的に不利な状況でも事件を諦めないボスのあだ名は不沈艦であった。ただし、ボスのボスから「君は不沈艦武蔵やな」といわれて、横で聞いていた当時の事務局は、「武蔵は沈められましたけど・・・」と思っていたそうであるが。
こうした、事件に肉薄しない訴訟活動のことを私は「表面をなでるだけの仕事」と呼んでいるが、立派なベテラン弁護士ほど、表面をなでるだけのような仕事は絶対にされないものである。
中途半端に経験を積んだ時期ほど危なく、表面をなでるだけのような仕事をして、痛い目に遭う。
もちろん、私が出来ているかどうかはさておきというのは、いつものことであり、人間である以上、気が緩むときもあり、頭をかくこともしばしばである。