事件の進め方

中隆志

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 判決しか決着があり得ないような事件であれば、とことん主張立証を尽くして戦うものであるし、かなりきつい調子の(名誉毀損とか懲戒にならないような書きぶりにすることは当然であるが、事実関係を指摘して、相手を完膚無きまでにたたきつぶすようなという意味である)書面を書くことも多々ある。
 その結果、感情面での対立はあるものの、裁判所の説得で和解が出来ることもある。

 ただ、事案として、和解して決着がつかないような事件で、しかも和解して欲しい側は相手方の方であろうと考えられる事件でも、同じような事件のやり方をすることがある。こちらの依頼者を悪し様に書き、感情面での対立も強くなってしまっているような事件で、突然というか、やはり、相手方から、「これで和解してもらえませんか」という提案が来ることがたまにある。
 こちらの主張に対して何も指摘しないままでは、争点がないので、和解のイニシアチブが全てこちらに来てしまうため、ある程度主張立証をすることは代理人として当然であるが、最終的に、相手方の方から頭を下げないといけないような事件で、とことんなことまで書かれたりしていると、依頼者がハイわかりました、と言ってくれることはない。
 事件を多数していると、私の側の依頼者が相手方に頭を下げて、和解的解決をせざるを得ない事件にあたることもある。そうした場合、依頼者にその立場を説明して、依頼者の方から、相手方に対する要求や主張をして欲しいという要望があっても、それを主張することで、後日和解に影響を及ぼしかねないような内容を含んでいる場合、「そんなこと書いたら、後でこうなる可能性があるし、今それを言わないでもええのと違うか」と説明をして、敢えて出さないこともしばしばである。
 京都の方は、経済的なことももちろんそうであるが、やはりメンツを大事にされるので、「ここまで書かれて、なんでこっちが折れてあげなあきまへんねん」と言われると、弁護士としても説得しづらい。
 そうした特性を理解していると、主張立証の度合いにある意味手心を加えて、こっちが頭を下げた時に、相手側の依頼者ものってきやすいようにしておくというのも、また一つのテクニックである。
 どの事件でも同じようなやり方をする弁護士がいるが、準備書面の書き方一つで、和解が決裂してしまいかねないということを心にとめておくべきであろう。

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