在りし日の小次郎
民事訴訟を提起する場合、たいていの事件では相手に資力がなかったりするために、損害金までは取れないことが多いが、交通事故で相手方が任意保険をかけているような場合には、判決に基づく遅延損害金が取れるので、重要である。
日弁連の研修草書で掲載されたので、もうノウハウとも呼べないし、法的には当たり前のことであるから、ブログで書くのだが、交通事故で訴訟提起前に自賠責から一定額の回収をしている場合でも、遅延損害金から充当していないケースがたくさんある。
たまに交通事故について、判決が出て、これが妥当かどうかということで、他の弁護士さんが書かれた訴状に関して、相談を受けることがあるが、けっこう元本に充当している。
たとえば、1億円の賠償額が認められる交通事故では、事故時から損害金が発生するため、2年後に判決が出たら、1年で5%の金利がつくので、10%の金利がつくので、1000万円にもなる。
この事案で、2年後に自賠責から仮に3000万円を回収してから訴訟を出す場合、いきなり元本充当すると元本は7000万円になるのに対し、損害金から入れると1000万円が損害金に、2000万円が元本に充当されるので、8000万円が元本ということになる。
そこから訴訟をして、1年後にお金が入るとすると、元本が8000万円の場合は8400万円の回収が出来る。
これに対して、最初に元本充当すると、7000万円の15%となるので、8050万円となり、差額は350万円にもなる。
高額事案では、けっこうバカにならない数字であり、弁護士の費用等々がここから十分に出ることも多い。
ただ、私が見ていると、けっこうドンと元本に入れてしまっている弁護士が多い。
交通事故を分かっていないか、手を抜いていると見られても仕方がない。
日弁の研修草書では、元本充当すると、弁護過誤といわれても仕方がないと書かれていた。
少しの手間で、依頼者が受け取ることの出来る金額が増えるのである。
もちろん、性質上、既に支払われたもののうち、元本に入れざるを得ないものもあるが、そうでないものは、損害金から充当するように、私の事務所ではしている。