在りし日の小次郎
交通事故の被害者側の代理人をすることが多いので、被害者から交通事故の加害者側代理人に対する憎悪・悪感情等々を聞くことが多い。
中には、「先生、あの弁護士殴っていいですか」という物騒なことをいう人もいる。そういう人には、当然「ダメです」ということになるが。
加害者の事件をされる先生の中には、本当に頭が下がる丁寧な仕事をする人もいれば、何千件と事件をこなしているうちに、ルーティンワークで麻痺しているのかなと思う人がいないではない。
交渉してダメなら調停を出して、それでもダメなら債務不存在確認請求訴訟を保険会社側から起こすという流れ作業のようにされることもある。事件を進めるために、やっているのだとは思う。あと、判決が出るまで損害金も発生するから、それを抑えるという意味合いもあるのだろうか。保険会社の代理人はスポットで数件したことがあるだけだから、そのあたりの実情はわからないが。
被害者からしたら、まだまだ体が痛いし、治療したいし、裁判はまだ後でいいと思っていることもある。
債務不存在確認請求訴訟も、内容を見ると、本当に、「ゼロ」ではなく、保険会社側からしても、あと一定額支払わないといけないような事案であることを認識しつつ、事件を前に進めるために提起しているのだなと思う事件もある。
何かで読んだが、裁判官の講演録か何かで、このような事件の場合、被害者はまだ具体的請求をする意思がない場合には、「訴えの利益がない」という考えも成り立つということであった。
読んでなるほどと思ったものである。
件数はたくさんあるかもしれないが、事件はやはり個別であるし、被害者も個別なので、あんまり杓子定規なやり方でされると、被害者もそりゃ怒るわな、と思うこともある。
被害者の方からすれば、加害者側代理人は敵であり、気持ちが相容れることはきっとないのであろう。