在りし日の小次郎
最近の若い弁護士の傾向として、やたらに表現が過激で、相手方代理人や相手方本人を攻撃する準備書面を書かれる人が多いように見受けられる。
そして、自らの立場によって立って、こちらの主張を「虚偽」であると決めつけることも多い。
代理人は現場に居たわけでもないわけであるから、その事実があったかなかったかは、現時点での証拠によって再現するほかないのであり(訴訟において最終的に認定される事実は、生の事実と異なることはあり得るのであり、歴史的事実と同じである。歴史的事実は体験することは出来ないから、史料に基づいて、そのときに、『こういうことがあった』はずであるという事実に過ぎない)、相手方は相手方なりの立場に立って証拠に基づいて主張しているのであるから、「虚偽」という決めつけは、私は原則しないようにしている。
また、相手方を攻撃したり、相手方代理人を悪し様に書くような書面は、読んでいて気分が悪いのみならず、裁判官にとってはどうでもいい事実であるばかりか、それを書く代理人の品位を疑わしせしめるだけで、訴訟上無益である。
また、訴訟においては、和解という解決がありうるが、最終的に和解をする話となった時に、依頼者がいうのは、「あんなことまで書かれて和解しないといけないのか」という書面に対する怒りであることがあり、和解の内容はともかく、相手方代理人の書面によって事件の解決が出来なくなってしまうことがある。
こうした書面は、自らの主張に内容があまりないか、自信がないため、過激な言葉を用いているのか、あるいは、自らの依頼者に喜んでもらうために書いているのか、また、過激に書くことで、相手方にプレッシャーを与えることを目的としているのかのどれかなのであろうかと思う。
しかし、前述した理由により、こうした書面は害の方が大きいのであって、出来るだけこのような書面は書かない方がよいというのが私の持論である。
相手方に対してプレッシャーを与えるのは、証拠や経験則に基づいた説得的な主張を書けば足りるのであり、依頼者が、相手に対して誹謗中傷的なことを書いて欲しいと言ってきた時には、私は依頼者に「そんなことはこれこれこういう理由で書けない」と言って断っているほどである。
判例時報・判例タイムズや、懲戒事例集を見ていると、訴訟上の主張が相手方の名誉を侵害するものとして不法行為が認められて損害賠償の支払を命じられていたり、懲戒となっている例もあるから、そうした無用の労力や紛争を拡大させないためにも、訴訟で提出する書面には相当の注意が必要である。
もちろん、ベテラン弁護士の中にもムチャクチャ書いてくる人はいるのだが。。。