在りし日の小次郎
庭に1本だけ椿の花が植わっている。購入した時に既に植わっていた。
夜に庭で葉巻を吸っていると、「ボタッ」という音がした。
見ると、白い花が根本から切れて落ちている。
その椿の下には、根本から落ちた花がいくつも落ちている。
椿の花が落ちるのは、戦で武士の首が落ちるのを連想させるので、武士は椿を植えないというような俗説があるのもわかる気がした(明治以降にいわれるようになったもので、昔の武士は庭に植えていたようである)。
ただ、それが俗説としても、落ちている花を見るだけならまだよいが、花が落ちる瞬間の音は確かにあまりいただけない。
暗闇の中に白い花がたくさん落ちているのを見ているのは、あまり心地いい物でもない。
早々に葉巻を吸い終えて、ふと横の鉢植えを見ると、先日見たカミキリムシが鉢植えの中で木に絡まるようにして死んでいた。
うちの父親がカミキリムシを見つけて、触覚を持って投げたという話を聞いていたが(ひどい話である)、ひょっとしたら木に絡まりながら死んでいったのかもしれないと思い、心が痛んだ。
特にオチもなく、以上です。