代理人としての節度

中隆志

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 最近の若手弁護士に多いように思うが、どうしようもなく、いうこともない事件でも、「何かいわないと、ボクがバカだと思われてしまう。ボクは賢いんだゾ。」と思うのであろうか、書かないでもいい主張を書いてさらに墓穴を掘ったり、悲惨な事件でさらに被害者の気持ちを逆撫でするようなことを平気で書いたり、この事件でそこまでいうと、かえってダメだろうというように、「必死になりすぎている」弁護士が見受けられる。事件の筋を捉えて一生懸命することと、事件の筋からいって、この事件はここまでと止めることは矛盾しない。
 むしろ、そうしている方が有能だということがわかる。

 すなわち、トレーニングされたベテランの弁護士だと、一定の類型の事件を見れば、「この事件はこの程度が落としどころであるから、主張はここまでにしておくべきだ。無用の紛争を招くべきではない」として相応の主張にとどめる。なんでも言えばいいというものではない。

 死亡しているような事件の場合、被害感情も強いので、ベテラン弁護士の場合、それを逆撫でするような主張はしないし、尋問でもさらっとしたことしか聞かないことが多い。
 主張にもほどほどというところがあるが、経験がないと、それが分からないということなのだろう。
 あるいは、弁護士としてどうというよりは、人間としての常識が欠落しているといってもいいかもしれない。

 自分が批判されることになれておらず、こちらが当然の指摘をすると、どんどんエスカレートする場合もあるようで、よけいにおかしくなっていくことが多い。批判したら逆ギレする人もいると聞く。
 それだけ、自分に自信がないというか、薄っぺらいことを覆い隠そうとするのであろう。

 代理人としての節度というものがあり、このような態度でいると、そのうち足下をすくわれることになる。懲戒請求でもされたら一発アウトのような訴訟活動を平気でしていて、私と裁判所で救ってあげたこともある。

 やれやれである。

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