弁護士の愉しみ

中隆志

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 事件を引き受けて、中々難しい事案であり、既存の知識や条文だけでは解決策が見いだせないことがある。
 これは、どれだけ経験を積んだとしても、起こりうることである。

 こうした時に、法律の本質や考え方からすると、「行けるのではないか」と推測し、文献や判例を調査して、こちらの見解に合う文献や判例を発見するというのは、弁護士の愉しみである。

 昔は判例検索ソフトなどなかったから、それぞれの条文ごとに、判例の要旨が掲載されていた本が加除式で販売されていた(今もあるのかもしれないが)。勤務していた頃は、この本で判例を調べていた。
 しかし、調べていると、他に気になっている事件に関係する判例などを調べてしまい、つい時間を過ごすということが多かった。
 聞いてみると、私のボスやN村T雄弁護士も同じようなことをしていた。
 弁護士の業であろうか。

 前にも書いたが、文献は1冊だけではいけない。必ず複数(2冊よりは3冊、3冊よりは4冊くらい確認した方がいい)で調査すべきである。本が間違っている時もあるからである。

 こういうことが愉しいと思えないと、弁護士は向かないともいえるのだが。

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