読書日記「百年の孤独」
大学時代、無性に釣りに行きたくなるときがあり、そういう時はS井に声をかけて無理矢理連れて行くのを常にしていた。
あるとき、釣りサンデーを読んでいると、「波止場の飲ませ釣り特集」というのがあり、まず小さい魚を釣り、その魚を生きたまま泳がせておくと、巨大な青物(ツバス)とかスズキが釣れるというのである。
「これや!!!」と試験勉強中に光明を見いだした気持ちになった私は、早速S井に電話をして、神戸の方の波止場に行こうということで無理矢理に予定を入れたのであった。
確か平日の朝の始発くらいに京都を出る新快速の先頭車両に乗っておいてくれとS井に言い、大阪駅から釣り竿を持って乗り込む。
通勤客の中でこれは目立つ。大学1年生の時に父親の自動車を峠で廃車に追い込んだ私であるので、自動車で行くという選択はなかったのであった。
波止場に着くと、平日なのに人がけっこういる。この人達は何をしているのだと思う私。仕事せんかい(自分のことは棚に上げている)。
ややしらけた感じでいそいそと支度をする私を見るS井。私もたいてい焦らない男だが、S井は私よりももっと焦らない。焦らないというよりは、気持ちが高揚することがあるのかという気もする。ノリノリでカラオケでソファーの上に立つことは一生ないであろうS井である。
まあそれは置いておくとして、つり出したが中々釣れない。
周りのオジサン達も釣れていない。釣りサンデーはウソだったのか~。
焦る私。
何度も狭い波止場で投げを繰り返すうち、私がビュンと投げた時、後ろで、S井の、「イテテテ…」という声が聞こえたのであった。
つづく。