読書日記「百年の孤独」
小さい頃、鉛筆のお尻につける何かのキャラクターをかたどった消しゴムをつけている子どもがクラスにいた。
それを自慢げに周囲の子に見せるのである。金持ちの子であった記憶である。
私はどうしても欲しくなり、その子の言っているのを聞いていると、どうも三菱のユニという高級鉛筆を買えばもらえるというのである。私の記憶では、当時ユニは、私が普段使っている鉛筆の2倍以上した高級品であった。ひょっとしたらユニではなかったかもしれないが、なにしろ30年以上前の記憶であるのでご容赦願いたい。
母親に鉛筆を買いたい、ユニを買いたいと言って数百円もらい、意気揚々と文房具屋にいってユニを数本買ったが、景品の消しゴムを店の人がくれないので聞いてみたところ、「1ダース買わないとあげられないんだよ」と気の毒そうに言われたのである。
私はショックを受けたが、その場では平然として信号を越えたすぐのところの自宅に戻るや否や、玄関で号泣してしまった。ユニを1ダース買わないといけないなどとなんという試練であろう。
号泣していると、母親が、「なんでないてるんや」と母親が聞いてきたので、号泣しながら理由を話すと、「男が消しゴムくらいで泣くなー。1ダースぐらいこうたるわー。」と言ってお金をくれたのであったか、母親が買いにいったのであったか忘れたが、その消しゴムを入手することが出来たのであった。
今から思うと、そのような消しゴムは全く欲しくないのであるが、当時はものすごく欲しかったのである。うちは裕福な方ではなかったから、ユニを1ダース買うということは母親にとっても経済的につらかったと思うが、そのときはただただ消しゴムが欲しかったのである。
当時は、学校の制服が買えず、冬でも半袖のぺらぺらの制服2枚で過ごしてさぶいぼをたてていた子どもも何人もいたような時代であった。私は上着を着ていたので普通だったのかもしれない。
その消しゴムは、消しゴムとしては全く消えない使い物にならないもので、結局ユニ鉛筆を買わせるためのキャラクター商品なのであったが、ああいう景品というか、お金で買える特典というものは、時には子どもを身も世もなくつらくさせるものなのである。